タテジマキンチャクダイ(タテキン)を美しく飼育するコツ

タテジマキンチャクダイの飼育方法・繁殖方法

 

タテジマキンチャクダイ

定番の人気種、タテジマキンチャクダイ

学名(Pomacanthus imperator)英名(Emperor angelfish

タテジマキンチャクダイはスズキ目キンチャクダイ科サザナミヤッコ属の海水魚です。

和名は、縦縞巾着鯛です。別名「タテキン」 幼魚は模様が違う為「ウズキン」や「ウズマキ」と呼ばれています。

特徴や生態・雑学

 

 

ペアで泳ぐタテジマキンチャクダイ

ペアで泳ぐ野生のタテジマキンチャクダイ

 

タテジマキンチャクダイの最大の特徴は、やはり幼魚から成魚へ変化するときの模様がガラリと変わることでしょう。
幼魚の渦巻状の模様から、成長にするにつれ縦縞模様に変化する様は、毎日の変化を見るのが楽しく、とても特徴的であることから、大変人気の高い海水魚です。
体型は、側扁(そくへん)と言われる、体の高さに比べて厚みが少ない体型をしています。
幼魚では体の後半部分で、太い紺色の縞が渦巻状になっています。

ウズマキキンチャクダイ

タテキンの幼魚「ウズマキ」「ウズキン」成魚とはまるで別種のような柄をしている

その模様が成長にするにつれ成魚では黄色い地色に紺色の縦縞模様に変化していきます。
個体差はありますが、一般的には全長が10cm程まで成長すると徐々に渦巻状の模様が変化していき、大体15cm程で成魚のきれいな縦縞模様に変化していきます。
稀に、15cmを超えても渦巻模様のままの個体もいます。
成魚の縦縞は大きくなるにつれて模様の本数が増えていきます。縦縞に加え、成魚では目と胸ヒレの辺りに黒色もしくは濃い紺色の帯模様があり、尾ビレは黄色一色で斑模様や縞模様は見られません。

体は丈夫ですが、同属魚種や同種同士の混泳をしてしまうと、喧嘩や縄張り争いが起こる可能性が高いですので注意が必要です。

タテジマキンチャクダイは観賞魚として利用されますが、成魚は食べることも可能です。
お刺身にすると、コリコリと歯ごたえがあり、脂も乗って非常に美味、らしいです。

渦巻模様の小さい幼魚から飼育し、成魚の縦じま模様への変化を楽しむ。
そして最後には食用としても楽しむというマニアックな飼育をする人も存在します。


そんな素敵なタテジマキンチャクダイの飼育方法や特徴、飼育する上での最適な餌や入手方法、価格などを解説していきます。

 

タテジマキンチャクダイ(タテキン)飼育難易度早見表

・性格    :★★☆☆☆   テリトリー意識が非常に強いので同種との混泳は避けて下さい。

・対病性   :★★★☆☆   大型ヤッコ特有の頭皮欠損症を発症する可能性があります。

・対水質悪化 :★★★☆☆   水質の悪化により肌荒れを起こしやすいので注意して下さい。

・餌付き   :★★★☆☆   雑食性で何でも食べますが、植物性の餌と混ぜることをお勧めします。

分布について


タテジマキンチャクダイは、日本では相模湾の南部や沖縄に生息しています。
外国の生息地としては、フィリピンや東インド諸島などの太平洋西部・中部、インド洋に生息しています。

幼魚期と成魚期で生息する場所が違います。

幼魚期は主に、浅くて潮の流れがない場所に生息している、サンゴ礁の根の周辺や、根の中にある穴の中に単独で住んでいることが多く、体色が変化し成魚になるまであまり場所を移動しません。

成魚になってからは、流れのあるサンゴ礁付近に移動します。
基本的には単独で生息しますが、稀にペアを見かけたりします。

夏から秋にかけては、本州沿岸でも幼魚を見かけることが出来ますが、これは孵化した稚魚が黒潮に流されて北上したものと考えられます。
その為、水温の下がる冬になると死んでしまいます。
この分布の仕方は、死滅回遊 もしくは 無効分布 と呼ばれています。

成魚は生息地域によって、背ビレの形状が少々異なります。
日本近海や太平洋に生息する個体は背ビレの後端が長く伸びています。
インド洋や紅海に生息する個体は背ビレが伸びることはなく、丸みを帯びた形状になります。

生息分布が広いのもタテジマキンチャクダイの特徴であり、最もよく見かける大型キンチャクダイです。

大きさについて


幼魚期は10cm程のサイズから成魚期への模様へと徐々に変化していき、体長が15cmになる頃に成魚の縦縞模様へと変化完了するのが一般的です。
タテジマキンチャクダイは大型のヤッコですので、成魚になりどんどん成長し、30cm程にも成長し、大きいものでは40cm程まで成長する個体もいるようです。

最適な飼育温度について


水温は26~27℃をキープするように心掛けて下さい。
タテジマキンチャクダイは大型ヤッコの中でも比較的体が丈夫な方ですが、水温が高くなりすぎると白点病の原因となる可能性がありますので、人工資料に加え植物性の餌も与えてあげて、ベストな体調をキープすることを心掛けて下さい。
また、タテジマキンチャクダイは水質の変化に敏感で、水質の悪化により体表の肌荒れを引き起こす可能性がありますので、水質の維持に配慮してあげて下さい。

タテジマキンチャクダイの飼育は難しい?


大型のヤッコの中で、タテジマキンチャクダイは特に水質悪化による肌荒れを引き起こしやすい魚種といえるでしょう。

水槽内の掃除や、水替えなど水槽内のちょっとした変化にも敏感に反応してしまい、綺麗な縦縞模様が肌荒れによって乱れてしまうことが多くあります。

綺麗な縦縞模様と美しい色艶を維持する為には、水槽内に多くの海水魚を入れすぎない様に注意したり、プロテインスキマーを設置するなど、水質の維持により注意が必要になってきます。

タテジマキンチャクダイとスカンクシュリンプの共生

 

スカンクシュリンプがタテキンを掃除

スカンクシュリンプが掃除している様子

タテキンをはじめ、ヤッコの多くはスカンクシュリンプに体表やエラの掃除をしてもらいます。
そのためタテキンがスカンクシュリンプを補食する事はありません。

タテジマキンチャクダイの入手方法や販売価格について


生息分布が広域に渡る為、流通量は多いため入手はしやすい魚種だと言えます。

ただ、幼魚(ウズマキ)と成魚(タテキン)では、その販売額に大きな開きがあります。

個体の大きさにもよりますが、幼魚では6,000~7,000円ほどで流通してます。
成魚になると、体長20cmほどで大体20,000円ほどで購入可能になります。

ですがこれはあくまでも目安で、成魚の体長が大きくなれば値段も高くなる傾向にありますので、成魚のご購入をお考えの際にはご注意下さい。

どちらかといえば、成魚よりも模様の変化を楽しめる幼魚の方が人気が高く、入荷量も多い傾向にあります。

成魚はサイズが大きい上に餌付けに食い性質があり、また水槽内の環境にもなれるのに時間がかかる可能性があります。
大きなタテジマキンチャクダイが暴れるとかなり力もあり、また個体の重量も重たくなる為、意外と売れ残ることも多いようです。

 

タテジマキンチャクダイの飼育の注意ポイント

 

タテジマキンチャクダイは縄張り意識が大変強いです。
人間であってもダイバーが縄張りに近づくと一旦は岩場の陰に隠れますが、隠れながらも体内の浮き袋を「グワッグワッ」と鳴らして威嚇してくることもあります。

立派な柄のタテキン

タテジマキンチャクダイは縄張り意識が強い

水槽内の飼育に関しては、人になつきやすく、慣れれば手から直接餌を与えることも可能になります。タテジマキンチャクダイの特徴として挙げられるのは、何よりも幼魚から成魚へ成長するときの模様の変化でしょう。
また個体によっても、まるで指紋のように個体ごとに模様が違います。

タテジマキンチャクダイの幼魚は他のサザナミヤッコ属と異なり、上下にくねくねと体を揺らしながら泳ぐ、「ワッキング」という動作を行います。

この動作は、天敵に対して自分を有害生物だとアピールする一種の擬態だと言われてます。

幼魚期の渦巻模様は、色々と諸説があります。
・成魚同士の縄張り争いに巻き込まれないように区別させる為
・毒を持つウミウシに姿を似せることで、外的に狙われにくくする為(青色は魚に対して毒のサイン)
・渦巻模様の中心を目に見立てて敵を惑わす為

などがあり、進化のルーツとしても、サザナミヤッコの幼魚とタテジマキンチャクダイの幼魚が似ている為、もともとは同じ幼魚から2種に分かれたのではないか、という説もあります。

ですがどれも各々が仮説の域を出ていないためはっきりとした結論には、現時点では至っておりません。

あと、タテジマキンチャクダイは良く寝る魚種ですので、導入時は「病気ではないか?」と少し心配になられるかもしれませんが、この魚の性質ですのでご安心下さい。

タテジマキンチャクダイの飼育方法・餌付けの方法

 

タテジマキンチャクダイは雑食性で何でも食べる為、餌付けにはさほど困らないでしょう。
ただ1つ注意が必要な点が、タテジマキンチャクダイは動きが非常にゆっくりとしており、食欲旺盛な個体と混泳した場合、餌にありつけない可能性があります。

その為フレークタイプの餌よりも、時間と共に沈下する顆粒タイプの餌を、出来るだけタテジマキンチャクダイの近くで餌を投入してあげるなど、少し配慮してあげると喜んで食べるでしょう。

人工飼料も問題なく食べますが、自然界では藻類も食べてますので人工飼料と一緒に植物性の餌を与えるとより自然界での状況に近づけることが出来るでしょう。

大型のヤッコは頭皮欠損症に罹る可能性がありますので、対策としてビタミンBを摂取させてあげることが考えられます。
その為、レタスなどを定期的に与えてあげると病気の予防にもなるかと思われます。

ヤッコの魚種の特徴としてサンゴのポリプを突っつくので、共生の際には注意される事をお勧めします。

人工飼料 顆粒タイプ

 

顆粒タイプの餌は、しばらく浮いてますが、時間と共に水中に沈みます。
ゆっくりとした動きのタテジマキンチャクダイでも捉えて食べることが出来るでしょう。

乾燥レタス

 

物性の餌を摂取することで頭皮欠損症の予防になります。
レタスはビタミンBを多く含んでますので、細かくちぎったものを乾燥させ、毎日少しずつあげることで病気の予防になるでしょう。

焼き海苔


植物性の餌で、なにより海藻なのでミネラルも豊富です。
バランスの良い餌を摂取することで免疫がつき、病気予防になります。

※どの餌にする場合も海水用のものを選びましょう。

 

実際にタテジマキンチャクダイに餌をあげましょう

 

タテジマキンチャクダイの成魚はサイズが大きい上、成魚になってから導入すると少々餌付けにくかったり、水槽の環境に慣れにくい可能性があります。

それに比べ幼魚を導入する場合は、成魚に比べ比較的環境に適応しやすいかと思います。

ただ、幼魚はまだ成長しきっていない為、バランスのいい餌を与えてあげること、水質の維持の為にこまめな水換えや水槽内に酸素を満たしてあげるなどの配慮、注意が必要です。

生態よりも幼魚の方が環境の変化には敏感ですので、成魚への模様の変化を楽しむ為にも、注水時には水合わせなどを慎重にされる事をお勧めします。

 

餌を与える頻度

 

餌を与える回数は特に決まっておりません。
ですが、タテジマキンチャクダイは動きがゆっくりとしてますので、他の海水魚と混泳させる場合、餌の取り合いになったとき自分の餌を確保できない可能性があります。

顆粒タイプの餌を与え、水中に沈んできたときにタテジマキンチャクダイの近くにくる様に投入位置を調整してあげたり、他の海水魚があまり食いつかない様に植物性の餌を与える頻度を増やすなど、よく観察した上で食べきれる量の餌を投入してあげて下さい。

 

 

タテジマキンチャクダイを飼育する前に必要な物、用意する物

 

タテジマキンチャクダイが喜ぶ水槽サイズ選び


タテジマキンチャクダイは成長のスピードがゆっくりで、大体2ヶ月に1cm程の成長スピードです。
ですが、成魚になるまで同じ水槽で飼育することを考えると、60cm以上の水槽での飼育をお勧めします。

ただ、10cm程の幼魚(ウズマキ)から飼育した場合、成魚になり時には15cm程には成長しており、成長スピードを考慮すると60cm水槽では2年間ほどの飼育が限界と言えます。

その為、可能であれば導入初期から出来るだけ大きな水槽での飼育をお勧めします。

また、タテジマキンチャクダイは縄張り争いが起こる可能性が高いので、同じ水槽内では同種での混泳は避けた方が良いでしょう。

 

タテジマキンチャクダイの飼育に適したフィルターや濾過システムとは

大型であってもヤッコの仲間ですので、水質の維持には注意してください。

大きな水槽であれば、海水の許容量も大きいのでそれだけ水質も安定しやすい為、設置場所等に余裕があれば、出来るだけ大きい水槽の設置をお薦めします。

成長に伴い、食べる餌の量が増え、それに伴い排出するフンの量も増えます。

水質維持の為に濾過能力の高い水槽を作ることが望ましいです。

プロテインスキマーを設置し、水槽内に酸素を充実させこまめに水替えを行う事が、成魚への模様の変化を楽しむコツです。

タテジマキンチャクダイの飼育に最適な照明器具は?

 

タテジマキンチャクダイは比較的深場に生息してます。出来るだけ生息環境に近づけることがストレスの軽減、美しい模様への近道、健康に繋がります。
特に強い光は必要ありませんので、水質・水温に注意を払えば特に照明器具にこだわる必要はありません。

 

テタジマキンチャクダイの寿命

 

自然界での寿命とはズレがあるかもしれませんが、テタジマキンチャクダイを水槽内で飼育した場合の寿命としては4~5年ほどかと思われます。

水槽内の環境や与える餌の種類や植物性の餌の比重などによって差が出てくるので、あくまでも1つの目安として捉えて下さい。

 

ただし、水温や餌などの水槽内の環境によっても差が出てくるので、寿命として一概には言えないようです。

一般的には水温が高く餌を大量に上げる飼育環境だと寿命を縮めてしまい、低い水温で控えめな餌の量で飼育すると寿命が長くなるといわれています。

 

タテジマキンチャクダイがかかりやすい病気・原因・対策


大型のヤッコで特に発病しやすいのが、頭皮欠損症です。

白点病なども水槽内の環境によってはもちろん発病する可能性はありますが、他の種類ではあまりかかることのない頭皮欠損症にかんして、下記にまとめてお伝えします。

 

頭皮欠損症

 

【 症状 】

頭皮欠損症の症状としては、頭皮の一部が剥離症状や、頭皮の欠損は確認できなくとも色素が抜けてしまって白く禿げて見えてしまう症状などが挙げられます。

大型のヤッコの、幼魚から成魚への成長過程で、結構に高い確率で発症してしまいます。

【 原因 】


大型のヤッコに特に発症しやすいこの病気は、明確に原因が特定されておりません。


・白点病治療の際に使用した硫酸銅の残留銅濃度によるもの
・混泳により、ヤッコがストレスを感じ抵抗力が下がった結果
・水質の悪化によるもの

など、色々な憶測がされてきましたが、白点病の治療をしたことのない水槽や、大型ヤッコの単独飼育水槽でも頭皮欠損症が発症している例がありますので、
上記3つの考えられる原因に加え、栄養素の不足により発症している可能性も考えられるのではないか、と推測できます。

【 治療方法 】


治療方法として、栄養素の不足が原因であった場合、として記載させて頂きます。
人工飼料に加え、植物性の餌を摂取させてあげる為に、乾燥レタスや焼き海苔を与えてあげてはどうか、と思います。

ただ、焼き海苔を選定するとき、添加物が含まれている味のりではなく、純粋な焼き海苔の選定をお願いします。

レタスは細かくちぎって乾燥させたものを、毎日ごく少量与えてみて下さい。
レタスはビタミンBを多く含んでおり、焼き海苔はミネラルを含んでます。

二つを人工飼料に加えてバランスよく与えてあげれば、大型ヤッコに関して成長に伴い色素が抜けてしまうことも防げるのではないかと思います。

前提として、あくまでメインは人工飼料と与え、不足しがちなビタミンBとミネラルを補うようにして下さい。
バランスの良い食事を摂取することで、成長しても継続して色彩の綺麗な状態で保つことが出来るようになると思います。

 

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