イボハタゴイソギンチャクの飼育方法や長期飼育に必要な条件

イボハタゴイソギンチャク飼育のコツとは?「照明の強さ、餌は与える?」

 

イボハタゴイソギンチャク

イボハタゴイソギンチャク(グリーン)

学名(Stichodactyla haddoni)英名(carpet anemoneなど

イボハタゴイソギンチャクは花虫綱六放サンゴ亜綱イソギンチャク目のハタゴイソギンチャク科Stichodactylidaeに分類されるイソギンチャクです。触手の長さが少し違うハタゴイソギンチャクと同じ属に属しており、砂地に体を埋めて底の岩等に張り付いている事が多いです。

イボハタゴイソギンチャクの特徴

イボハタゴイソギンチャクは短い小さな球状の触手が沢山付いており、砂場や岩場に張り付いて生活しています。イソギンチャクに共通する刺胞毒という毒を触手に持っており、素手で触るとビッシリ手に張り付いてきます。肌の弱い方は素手で触らないように注意してください。

イボハタゴイソギンチャクの刺胞毒で身を守るために、カクレクマノミやクマノミ、ミツボシクロスズメダイの幼魚や若魚がよく共生しています。他にはイソギンチャクエビなども天敵に捕食されないように、イボハタゴイソギンチャクの掃除役として共生していることが多いです。

 

分布や採集地域

 イボハタゴイソギンチャクは西太平洋やインド洋に生息し、日本では沖縄や周辺に暮らしています。

和歌山県の串本や高知県の南部、九州でもイボハタゴイソギンチャクは見る事ができます。

強力な吸着力で岩盤等にくっついていますので、見つけたとしてもなかなか採集は難しいです。

イボハタゴイソギンチャク

野生のイボハタゴイソギンチャク

イボハタゴイソギンチャクの大きさについて

 

イボハタゴイソギンチャクのサイズは、小さなものでは直径5cm程度のものから大きい個体になると60cm以上になります。流通している個体は15cmから30cmくらいが多いです。

 

イボハタゴイソギンチャクが好む水温

 

イボハタゴイソギンチャクを飼育する場合に適している水温は25℃前後です。イボハタゴイソギンチャクはハタゴイソギンチャクに比べて水温の変化に多少強いです。

 

イボハタゴイソギンチャクの飼育難易度

 

イボハタゴイソギンチャクの飼育は、初期に状態の良い個体を見つければさほど難しいものではありません。しっかりと水温や水質管理を行えば問題なく飼育が可能です。

類似種の「ハタゴイソギンチャク」に比べてイボハタゴイソギンチャクは比較的丈夫です。

ただし、グリーン以外のレッドやブルー等の原色系の飼育は難易度が上がります。

イボハタゴイソギンチャク

カラーのイボハタゴイソギンチャク

 

 

イボハタゴイソギンチャクの価格や入手方法

 

イボハタゴイソギンチャクの販売価格は通常のブラウンカラーの個体で3,000円程度から販売されています。

カラーのイボハタゴイソギンチャクだと10,000円程度から販売されており、レッドの個体になるとかなり価格が高くなります。赤味が強く、コンディションの良い個体は40,000円以上で販売されます。

イボハタゴイソギンチャク

東南アジアから輸入されるレッドのイボハタゴイソギンチャク

イボハタゴイソギンチャクの別名

 

イボハタゴイソギンチャクはハタゴイソギンチャクと同様にひっくるめてカーペットアネモネと呼ばれる事があります。イボハタゴイソギンチャクはカーペットで例えると少し感触の硬いカーペットで、ハタゴイソギンチャクが肌触りの良いカーペットという感じですね。

 

イボハタゴイソギンチャクの飼育方法

 

イボハタゴイソギンチャクの飼育を始めるにあたって、準備するものや知っておくべき事を解説しています。

予め水槽のサイズや、一緒に飼育する生体を考慮した濾過機器などを検討すると、後々のトラブルも少なくなります。

イソギンチャクの仲間は、クマノミ等の共生する生き物と一緒に飼育する事がオススメです。

 

イボハタゴイソギンチャクにあった水槽選びとは

 

イボハタゴイソギンチャクの飼育に必要な水槽サイズは最低でも30cmは欲しいところです。

30cm水槽であれば、海水魚ショップや通信販売で売られている個体の中でも比較的小ぶりな個体を飼育する事が可能です。多く流通しているサイズの直径が15cm~20cm程度の個体は、60cm以上の水槽を用意してあげましょう。あまりに窮屈に飼育した場合、イソギンチャクの刺胞毒に耐性のある種類以外の生き物が、イボハタゴイソギンチャクの刺胞毒に触れてしまうリスクが増えていきます。イボハタゴイソギンチャクのような強い刺胞毒をもっているイソギンチャクを飼育する場合はなるべくゆとりをもった水槽サイズを選定する事が、トラブル無く飼育しやすい方法といえます。

 

イボハタゴイソギンチャク飼育に適したフィルターや器具とは

 

濾過装置は経験者から初心者の方まで様々な方法での濾過が考えられますが、必須で用意したいのはプロテインスキマーです。イボハタゴイソギンチャクは特に弱っていると有機物を沢山水中に放出します。その有機物を即座に微細な気泡で水槽外に排出する事で、水質の悪化を極力免れる事ができます。また、殺菌灯も保険としてつけておくと良いです。万が一弱った固体の一部が溶け出した際に、プロテインスキマーで処理しきれない量の有機物によって水質悪化が起こり、その他の魚類たちも弱る事があります。そんな時に殺菌灯があれば、イソギンチャクが万が一溶けたとしても他の魚達が病気にかかりにくい体勢をつくる事が出来ます。

 

イボハタゴイソギンチャクに最適な照明器具とはいかに?

 

イボハタゴイソギンチャクの飼育で使用する照明器具は、メタルハライドランプを近すぎない距離で程よくあてるのが良いです。光合成させる為にはそれなりの太陽光に近い波長が適していますが、水槽の水深を考えると、あまり近すぎるとイボハタゴイソギンチャクがクネクネと身体を動かして眩しそうな状態を示すことがあります。強すぎよりも若干弱めくらいの当て方が良いです。蛍光灯でイボハタゴイソギンチャクを飼育する場合も程よい光を意識するようにしましょう。

 

イボハタゴイソギンチャクが喜ぶ水流を作る事が大切

 

イボハタゴイソギンチャクに、新鮮な水流と心地よい波を送るためにサーキュレーターや水中ポンプを使用して水槽内に水流を作る必要があります。

イボハタゴイソギンチャクが好む水流の強さはやや弱めが良いです。今にも吹き飛ばされそうな状態になるほどの水流を与えるとストレスとなり、その場を離れて移動したり、弱ってしまう原因に繋がります。

 

イボハタゴイソギンチャク

居心地が悪いとラピュタのように飛んで行く事も

 

イボハタゴイソギンチャクの飼育に適した海水と水質

 

イボハタゴイソギンチャクは海の生き物ですので、当然海水での飼育が必須です。人工海水を人工海水の素で作る場合、しっかりと全ての塩が溶けきった状態で1.021に合せましょう。天然海水であれば、基本的に塩分濃度は基準値になっていますので、天然海水を取り扱っているショップからの購入を定期的に行うか、近くに海がある場合は新鮮な天然海水を汲みに行くことになります。天然海水はイボハタゴイソギンチャクのルーツですので水換えの際は毎回で無くとも、天然海水をいれてあげると喜びます。

 

比重計

イボハタゴイソギンチャクに適した1.021の比重にしっかりと合せるようにしましょう。水が蒸発したり、水換えの際に塩分が大きく変わった状態になってしまうと、貼り付いていた場所から移動したり、不調になってしまうことがあります。なるべくゆっくりと比重を最適な数値にあわせてあげましょう。

 

ヒーターとクーラーの準備

イボハタゴイソギンチャクのを飼育するにはヒーターは必須アイテムとなります。夏場で室内が高温になる場合はアクアリウム用のクーラーを用意しましょう。年中室温が一定に調整されている環境であれば必要ありませんが、例えばヒーターが故障した時の保険としてもクーラーが役立つこともあります。

 

イボハタゴイソギンチャクの飼育は砂地が良い

 

ハタゴイソギンチャク類ののソギンチャクは砂場に胴体を潜らせて、岩盤などに張り付いています。イボハタゴイソギンチャクは、ライブロックが沢山入り組んでいたとしても砂地を好む傾向にあるので、底砂を胴体が隠れるくらいの深さまで敷くことで、ストレス無く自分が良いと思ったポイントに居座ってくれるようになります。

イボハタゴイソギンチャク

ライブロックはどんな物が良いか

 

イボハタゴイソギンチャクと相性が良いライブロックは岩状のライブロックです。岩状のライブロックでも比較的重量があって、イボハタゴイソギンチャクの体格に対して安定感のある物が良いです。枝上のライブロックや小さすぎる岩状のライブロックなどでは、頼りないのでそもそもそこに張り付こうとする事が少ないです。ライブロックの構成は、飼育する生体の事を考えて組み上げる必要があります。

 

 

イボハタゴイソギンチャクを実際に飼育する前の準備 

 

イボハタゴイソギンチャクに必要な水槽サイズや設備や機器は把握できたかと思います。

しかし実際に水槽や器具類を購入する前に確認しておきたいポイントがいくつかあります。

良い環境で長期的にイボハタゴイソギンチャクを飼育するために、しっかりとおさえましょう。

 

水槽の設置場所

 

イボハタゴイソギンチャクを飼育する水槽の配置を決める前に確認したい項目。

 

水槽を置いても大丈夫な強度が確保されているか

 

水の入った水槽はとても重たくなります。特にイボハタゴイソギンチャクが好むような岩状のライブロックで、安定感のあるものを多数いれた場合は結構な重量です。水槽専用の水槽台を使用するか、水槽の重量を計算した上で、大丈夫だと確信できる場所に設置しましょう。水槽台を設置してグラグラするような不陸が悪い場所は必ず避けましょう。他にも床が抜け落ちそうな木造の建物の場合は注意が必要です。

大体の水の重さは1リットル1kgですので、W60cm×H30cm×D30cmの水槽の場合は水量だけで、約54kgです。さらに水槽自体の重さや装飾物(ライブロック)などの重量も考慮する必要があります。大型水槽の場合は床の強度にも充分な注意が必要です。

 

水槽やイボハタゴイソギンチャク」に直射日光があたらない場所を選ぶ

 

日光がガンガンあたる場所に水槽を置くと、夏場の強い日差しを浴び続けると水槽はすぐに高温になってしまいます。自然界ではありえないような熱湯になる場合もありますので注意しましょう。また、直射日光があたる場所は多量のコケが発生したり、イボハタゴイソギンチャクに直接太陽光を照らし続けると必ず負荷がかかります。直射日光は避けて設置する事をオススメします。どうしても窓際や日光があたる場所に設置する場合は、遮光用にブラインドやカーテン、すだれなどを使用して、太陽の光を遮る工夫をしましょう。

 

小さなお子様やペットが容易に届く場所かどうか

海水魚を飼育していると、小さな子供やペットは興味津々です。手を入れてみたり水槽に衝撃を与えたりという事が考えれます。イボハタゴイソギンチャクのように刺胞毒が強いイソギンチャクに小さな子供が刺されと、大人が受ける以上の痛みや症状があらわれます。また、手を入れたり水槽に衝撃を与えると、海水魚や生き物へのストレスになります。最悪の場合は水槽が破損して水がこぼれ出したり怪我の原因にもなりますので、水槽の設置場所はじっくり検討しましょう。

 

水換えが必要な場合は水場も考慮する。

水換えをする場合に、水道水を利用する場合は水まわりも考えておくと便利です。水道が遠いと、バケツや容器で水を運んで海水を作るという作業が必要になってきますので、なるべく水道が近い場所のほうが、長期のメンテナンスは楽になります。水換えをする場合に必ず水を捨てますので、その場合も水場が近いと排水の手間が軽減されて便利です。長い長いホースを利用する手もありますが、水換えが頻繁になると束ねてあるものをほどいて、使い終わったらまた束ねて収納するという手間が大変になります。水場が遠いと、水をこぼしてしまうリスクなども当然増えてきます。

 

水槽の立ち上げと水槽への投入

イボハタゴイソギンチャクが見事なフォルムで毎日開花してくれるような水槽を作るために、初期の立ち上げは入念に行いましょう。

水槽の設置から海水の調整、そこから照明や水流・濾過装置まで全てを循環させてシミュレーションを行いましょう。試運転を継続するまえに、ショップの水槽の海水や他の水槽の海水を入れてバクテリアが少しでも増えやすい環境を作ると立ち上がりの速度も変わってきます。試運転を続けて1ヶ月程度経ったら少しづつ小さな魚等をいれてみて、大丈夫そうであればイボハタゴイソギンチャクをいれます。

 

水槽にイボハタゴイソギンチャクを入れる際の注意点

イボハタゴイソギンチャクは飼育の水換えや水を足すときと同様に、違った環境から違った環境にうつるときに水質が違いすぎると大きなダメージを受けます。ただでさえ引っぺがされてまいっているところに水質が違えばそれはハタゴイソギンチャクも大変ですよね。

 

水あわせの方法

 

・イボハタゴイソギンチャクを購入してきたまま、もしくは通信販売で到着した状態の水の入った袋のまま、そのまま飼育予定の水槽にいれて浮かべます。

 

・先ほどの袋の中の水の温度が飼育予定の水槽の水温と近くなってきたら、袋を取り出してバケツなどの容器にイボハタゴイソギンチャクを移します。エアーチューブを使用して、エアーチューブの片方をこれからイボハタゴイソギンチャクを飼育しようとしている水槽の水の中につけて固定し、もう片方を口でくわえて吸うか、スポイトなどで勢いをつけて吸うと、重力で水槽の水がバケツに落ちてきます。(サイフォン式といいます)それから水が出てきている方の端を、イボハタゴイソギンチャクが入っているバケツに固定します。(エアーホースの固定はエアーチューブ用の吸盤を使用すると便利です。)

水あわせの際に注意すべきポイントは、温度と水質は慎重に合せる事と、酸欠にならないように注意するという事です。慎重に行いすぎて時間が多くかかっては、酸欠状態が続く恐れがありますので、20分~30分程度で終わらせる目安で行いましょう。

それがしっかり出来たら、バケツのイボハタゴイソギンチャクと海水を一緒に水槽につけてしまって、一緒に優しく飼育水槽の中に沈めていきます。イボハタゴイソギンチャクがひっくり帰らない様に、イソギンチャクの同たい下の吸盤の部分を優しく支えて水槽に沈めるたらスッと手を引いてあげます。

 

イボハタゴイソギンチャクは餌を与えるべき?

 

イボハタゴイソギンチャクは、口元に餌を持っていくと食べてくれます。クリルや魚の切り身を与えます。但し、餌をあげなくても基本的に問題はありません。カクレクマノミなどのクマノミ系の種類を共生させると餌をくわえて、イボハタゴイソギンチャクに家賃を支払うように餌を与える姿が愛らしいです。

 

人の手でイボハタゴイソギンチャクに餌を与える場合の注意

 

クリルや魚の切り身などをイボハタゴイソギンチャクが食べられるサイズにカットし、ピンセットを使って口元にもっていってあげます。口元の周辺でポロッと落としてあげると器用に口まで運んで食べられるので、あまり口に近づきすぎてイボハタゴイソギンチャクに傷をつけないようにしましょう。

 

イボハタゴイソギンチャクって何年生きるの?

 

イボハタゴイソギンチャクがどの程度の寿命なのかという正確なデータがありませんが、イソギンチャク類に共通して、一定のサイズになると環境に応じて分裂します。

分裂して、また各自が自分の好きな環境に移動して住み着いて大きくなっていくというサイクルが一般的です。

 

 

イボハタゴイソギンチャクを飼育する上で注意したい事

 

イボハタゴイソギンチャクの刺胞毒は非常に強いです。

コンディションの良い個体は、素手で触手が生えている口盤の面に触るとマジックテープの様にはりついてきます。

それほど強力な触手を持っているイボハタゴイソギンチャクですので、他のイソギンチャクと同じ水槽で飼育する場合はなるべく離れる配置になるようなレイアウトを行うか、イソギンチャクはイボハタゴイソギンチャクのみで飼育するのが望ましいです。

 

イボハタゴイソギンチャクに似ている種類

 

イボハタゴイソギンチャクに似ている種類は、触手の長さがイボハタゴよりも長めのハタゴイソギンチャクが居ます。他にはミニカーペットアネモネ(mini carpet anemone)と呼ばれる種類が大きさは全然違いますがそっくりです。

長期飼育の最大のポイント

 

元気なイボハタゴイソギンチャクを選ぶには、薄っぺらく潰れていない個体を選びましょう。触手にハリがあって、外側にいけばいくほどびっしりカーペットのように詰まっている個体が良いです。

イソギンチャクにピンセットで餌を与える飼育者も存在しますが、一番良いのは共生するクマノミ等に餌を運んで貰う事です。

コンディションの良いイボハタゴイソギンチャクは電気の消灯点灯にとても敏感ですので、そのへんも判断する際に試すことができるのであれば見ておくと尚更良いです。照明が消えたらすぐに反応して、点灯したらバサーっと開いていくような個体がベストです。


下記では状態の悪いイソギンチャクの見分け方をご紹介しています。

イボハタゴイソギンチャク

弱っているハタゴイソギンチャクが売られている原因は

・薬物採取や採集段階で悪影響を受けた個体は、捕獲して売りさばく効率だけを重視した個体です。薬物採集されたイボハタゴイソギンチャクは1年以内に溶けてしまう事が多いです。

・輸送方法が劣悪だったり、輸送時間が長すぎるとストレスや再起不能の原因になります。

・入荷時は良いコンディションだったのに、お店での維持管理が行き届いていなかったなどの原因が考えられます。

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