海水魚飼育やサンゴ飼育に適した水質とは?

まず水質とは何なのか?を理解する事

水質の良い環境で良く育つサンゴ

 

「水が綺麗なのに魚が死ぬ」「海水魚は元気なのにサンゴが溶ける」という経験は無いでしょうか?

アンモニアだけを測って「水質はいいのだけど…」という事は無いでしょうか?

魚にとってアンモニアだけが魚に有害なのではありません。

ここでは水質検査をする物質についてと、サンゴ飼育に必要な元素について詳しく解説していきます。

水質が悪くなる原因

水質が悪くなると言う事はどういう事なのかを理解しましょう。

1.残り餌や魚のフンで汚れる

「水質が低下する」という表現が一番多いのが残り餌や、フンから発生する窒素系の汚れです。

つまり生物のアミノ酸が分解されることで発生するアンモニア、亜硝酸、硝酸塩の蓄積に加えてリン酸化合物が蓄積した状態です。

2.必要な微量元素が消耗されて不足

大気中に飛散したり、生命活動で消費されることによって、飼育水中から様々な成分が失われるのも水質低下だと言えます。

その中でもヨウ素は代表です。他にもカルシウムマグネシウムサンゴの石灰化の活動によって失われていきます

3.不要な成分が蓄積する

水槽から水分が蒸発→蒸発した分足し水で補う。というサイクルで水槽内に蓄積されていく成分もあります。

水道水に含まれるケイ酸などが代表的で、他にも亜鉛などの重金属が水道水には含まれていて蓄積していきます。

これらの水質悪化に行うべき対策

海水魚やサンゴが上手に飼育出来ない場合や、水質を測定した際に適正な数値では無い場合は対策が必要です。

1.換水する

水換えが有効

水換えは海水魚・サンゴ飼育共に有効

換水が最も有効な方法といえます。

「水がこなれる」という表現がある淡水とは違って、海水の場合は真水に塩を溶かした状態が一番良い水になります。

他の手段を試す前に「まずは換水」という方法が一番結果が得られやすい対策と言えます。

2.吸着材で吸収する

活性炭などの吸着剤

吸着剤は交換が必要になるが、有効な手段。

リン酸やケイ酸などは、吸着材が市販されています。

吸着剤を濾過槽などに入れて不要な成分を吸着させる事で、水槽内から取り除くことが出来ます。

ただし、吸着できる量には限界があるので定期的な交換が必要になります。

3.添加剤で補う

サンゴ飼育に添加剤

サンゴ飼育で不足しがちな微量元素を補う添加剤。

水槽内で不足した成分は添加剤よって補うことが出来ます。

カルシウムはCO2でサンゴ礫を溶かして水槽内に供給するカルシウムリアクターを使う方法が多いです。

その他、ヨウ素・ストロンチウム・マグネシウムなどは添加剤によって補う方法が一般的です。

魚やサンゴを状態よく飼育する為に水質を記録する

海水魚やサンゴなどを状態よく飼育していく上で、水質を測ることは大切です。

アクアリストの方なら誰もがわかっている事ですが、実際水質検査を完璧にしている人は少ないのが現状です。

●水質の記録が続かないのは

・デジタル水温計のように簡単に測れる数値ばかりではない

・精度や的確な効果があまり判らない(校正が必要だったりする)

・日常的に継続するのが面倒になる

が多くの理由です。

一般的に使用する試薬は手間もかからず安価で購入出来ますが、実験室などで使うもののように細かな数値までは計測できません。

検査結果は数値での検査ではなく色での検査になるものが多く、日々の変化がわかりづらく換水や濾過槽のメンテナンスで水質がどれだけ改善されているのかが把握しずらいことからモチベーションも下がり結局やめてしまうことが多いです。

それでも日々の検査結果をしっかりと記録していけば、改善されていることが具体的な成果として分かってきます。

アンモニア、亜硝酸、硝酸塩、リン酸塩、について

アンモニア・亜硝酸・硝酸塩・リン酸塩が計測できないほど少なくても、調子が悪い場合、他にどのような問題があるのか?

魚は水質は低下してくると、病気になります。

サンゴが白化したり溶けたりするには理由があります。

数値を計測しても完全に全てが分かるわけではありませんが、少なくとも計測できるデーターから見えてくるものはあります。

水質計測で注意すべき点として、一つは計測数値の曖昧差を理解すること。

比色で0に近く見えても、もっと細かい数値まで分かるテスターなら0ではないかもしれないので「0に近いぐらい少ない」程度に考えるようにします。

テスターには誤差があり曖昧差があることを理解しましょう。

PH(ペーハー値)

簡単に言えば、「酸性」か「アルカリ性」かということです。

小学校の理科の授業で習うリトマス紙と同じです。

中性は7ですが、海水の場合は8,1~8,4程度の弱アルカリ性になります。

汚れが増してくると、phは低下していきます。海水魚は徐々に変化していくphには耐えれますが急な変化には弱いです。

このことから、極端にphが下がってしまった場合は徐々に戻してあげないとphショックで死んでしまうことがあります。

サンゴ砂を敷くと酸性になったときに溶けてアルカリ性へと引き戻してくれます。

PHが下がる原因

・給餌量が多い
・濾過が上手く回っていない。
・サンゴ砂が入っていない。

PHが低い場合の対策

・換水をする
・PH上昇剤を使う
・サンゴ砂を敷く

NH3(アンモニア)

アンモニアは毒性が強いので、生体へのダメージも大きいです。

給餌により供給され、残り餌やフンによって水槽内の汚れになり、タンパク質が分解されて、アンモニアとなります。

水槽を立ち上げたばかりの時は、バクテリアが分解しきれずにアンモニアの毒性によって魚を死なせてしまうことが多いです。

濾過バクテリアを順調に増やすことができると、アンモニアは亜硝酸塩→硝酸塩と分解されていきます。

NH3が高くなる原因

・濾過が立ち上がっていない(プロテインスキマーのパワー不足)
・給餌量が多かったり、残り餌が多い
・生体が死んだり、そのまま放置されている

NH3が高い場合の対策

・濾過のシステムが正しいか見直す
・バクテリアを添加する
・換水をする

NO2(亜硝酸塩)

水槽を立ち上げた時、アンモニアを分解するバクテリアが繁殖してくると増加してくるのが亜硝酸塩です。

亜硝酸塩はアンモニアよりも毒性は弱いですがそれでも生体にとっては毒になります。

亜硝酸塩を分解してくれるババクテリアが増殖してくると亜硝酸塩は減少し、硝酸塩となります。

硝酸塩まで分解することができれ魚への毒性はかなり低下します。

一度濾過が立ち上がれば、途中で急激に増えることはあまりありません。

NO2が高くなる原因

・濾過が立ち上がっていない
・給餌量が多かったり、残り餌が多い
・生体が死んだまま放置されている

NO2が高い場合の対策

・濾過のシステムが正しいか見直す
・バクテリアを添加する
・換水をする

NO3(硝酸塩)

一般的に窒素を中心とした濾過の終着点です。俗に言われる最終残留物です。

アンモニア、亜硝酸塩に比べるとかなり毒性は低く、蓄積しても魚へのダメージは低いです。

ただしサンゴにとって負荷があるので、サンゴ飼育の場合は硝酸塩が蓄積しないようにする必要があります。

特にミドリイシ飼育などの場合は、この硝酸塩をどのくらいゼロに出来るかが勝負になってきます。

ほぼ検知できるか出来ないかの数値でもダメージを受けます。

NH3が高くなる原因

・浄化能力が不足している
・給餌量が多い
・生体が死んだまま放置されている
・水量に対して海水魚の数が多い
・水換えの頻度が少ない

NO3が高い場合の対策

・濾過のシステムを見直す
・生体の数を減らす
・生体が居る場合は餌を活き餌にする
・バクテリアを添加する
・換水をする

PO4(リン酸)

リンは全ての生物にとって必要な栄養素なので、魚用のエサには必ず入っています。

しかし、このリン酸塩の蓄積もサンゴ、特にミドリイシなどのSPSを飼育する場合には避けたい所です。

根本的には給餌を通じて着実に蓄積されているので、換水で取り除くか、吸着剤で吸着するしかありません。

吸着剤はアルミナ系のものと、酸化鉄系のものがあり酸化鉄系のものの方がリン酸吸着剤としては効果が高いです。

PO4が高まる原因

・給餌からの蓄積
・水道水からの供給
・生体が死んだ

PO4が高まった際の対策

・換水をする
・吸着剤を使う
・給餌を減らす

 

カルシウム、ケーエイチ、マグネシウム、要素等の微量元素について

サンゴ飼育ではとても重要になってくる微量元素。

特にミドリイシを中心としたイシサンゴを飼育する場合は必ず知っておくべき知識と言えます。

それぞれが沢山はいっていればOKという訳ではありません。

サンゴの状態を見ながら各元素のバランスを保ち、コンディションを整える事がサンゴを上手に飼育するコツです。

KH(ケーエイチ値)

KHは飼育水中の炭酸塩濃度を表した数値になります。

魚のみの飼育の場合は特に関係はないですが、サンゴを飼育する際にはとても重要になってきます。

特にspsなどのミドリイシなどの飼育はKH値は高く保つ必要があります。

レッドシーのテスターの場合はアルカリ度として計測されるので、一般的なKHに換算する場合は2.8をかける必要があり、ミドリイシのなどを飼育する場合は7~10の数値を保つ必要があります。

KHが低下する原因

・サンゴが消費してしまう

KHが低下した際の対処

・換水をする
・リアクターで供給する
・カルシウムなどを添加する

Ca(カルシウム)

カルシウムはサンゴ飼育には必要な要素になります。

特にミドリイシなどのspsなどを飼育する際は、十分はカルシウムの濃度を維持する必要があります。

数値としては400ppm~450ppmの数値は必要になってきます。360ppm以下を下回ってくるとSPSは成長が止まり、生命維持が難しくなります。

一般的にはカルシウムリアクターを使用して安定させることが多いです。

添加剤を使用する方法もありますが添加剤の場合は、KH、マグネシウムとのバランスが難しいです。

Caが低下する原因

・サンゴによる消費

Caが低下した際の対処

・換水する
・リアクターで供給する
・添加剤などで添加する

Mg(マグネシウム)

ミドリイシの飼育となると、Ca(カルシウム)とKH(ケーエイチ)の維持が重要視されますが、この両方の数値とMg(マグネシウム)は大きく関係があります

マグネシウムを維持していくためにはこの三要素をトータルで考える必要があります

一般的にはカルシウムはカルシウムリアクターで維持して、それで不足するKHとマグネシウムは添加剤で補うという手法をとることが多いです。

その数値から分かる通り、マグネシウムは海水成分中でも非常に大きな割合を占める要素です。

Mgが低下する原因

・サンゴが消費する

Mgが低下した際の対処

・換水する
・リアクターで供給する
・マグネシウムを添加する

I(ヨウ素)

ヨウ素は魚にとってもサンゴにとっても非常に重要な要素になります。

ヨウ素が不足すると魚は病気になりやすくなり、サンゴの発色にも関係すると言われています。

また、サンゴが光合成する際に作られる活性酸素による漂白化も防ぎます。

ですがヨウ素は海水中から損なわれやすいので、すぐに低下してしまいます。

ただ、ヨウ素の過剰摂取もバクテリアやサンゴにダメージを与えるので、計測した上での適切な添加が必要になります。

Iが低下する原因

・大気中に放出される
・紫外線により損なわれる
・生体により消費される

Iが低下した際の対処

・換水する
・添加する

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